継承

同業の仲間たちとは色々と境遇が似ているので一度話し出すと長くなります。
どんな話しかと言えば仕事の話しで、経営の話しになる訳です。
経営者の仕事のは大きく三つで、話す内容は大体この三つ。
①大筋の目標設定
②目標達成の施策
③継続の施策
①②③、どの話題もよく話す案件ですが特に③。次世代の事や事業継承の事は、人材不足の件と共に仲間と良く話す案件です。
会社を経営しつつ、継続の策(閉める続けるどちらも)を練る。これは経営者必須の仕事だと思います。

今40~50代の町工場(10人程度~50人程度)の社長は、ほとんどが「親がやっていた」人達かと思います。私もその一人。
ここでも何度か書いてる通り親族間のトラブルで継ぐのでは無く独立した私ですが、受け継がせてもらった技術には何の恨みも無いです(むしろ感謝してます)。
その技術を次の世代に渡したいと言う想いを結構強く持ってます。
(暑苦しい奴ね^^;)

我々世代の親達が次々と引退する中でその会社はどうするかと言えば、続ける、閉めるに別れますね。
閉める理由は様々だし、続ける理由も様々。出来れば継続したいと言うのが人情かと思いますが、無理してまで継続させる必要は無いと思います。
閉める理由は何でしょう?後継者不在と言う点と先行き不安の2つが大きな要因でしょうか。

先行き不安については様々ありますね~有り過ぎるw。
少し遡ると、汎用機一台で一人前の給与が取れていた今の70世代ですが、我々(40~50世代)が10代、20代の下っ端だった頃からNC機の全盛期を迎え、仕事のあり方が大きく転換しました。昔ながらの職人仕事が機械に取って代わり、価格が下がり続ける最中に海外の波が押し寄せ更に苦境に立たされる中、事業を諦める会社が出始めたのもこの時期ですよね。そしてリーマンショックが起きて15年が経ちます。この間でほぼ淘汰は終了している様に思えますが、まだその時の遺産を引きずっている会社も多いです。

工業製品を数多く作り、内に外に影響力のあった日本の姿は今は無くなりました。今後は少ないパイを食い合う展開が予想されると言いますね。けど競争が激しいのは何も我々の業界に限った事では無いし、激しく食い合うピークは過ぎている様に思えます。今は仕事のある会社、無い会社に二分されてそれもかなり極端に別れてる...所謂二極化されていると感じます。更に今後AIの台頭が想定される現状、継続するのはちょっと厳しい様にも思えます。私も書いてて「ん~厳しい」と思っちゃいましたw。

ここ数年数十年は様々な過渡期、と言う思いは私にもあります。ですが、私はまだこの仕事には需要があると思っています。人が豊かな生活を送る為に機械は必要不可欠。今更原始時代には戻れないです。家庭菜園が趣味と言っても鍬で畑を耕すのは本当に大変で、一度耕運機使ったら二度と鍬で畑を耕そうとは思わないはずです。笑
耕運機は正しく機械の塊。機械加工あっての賜です。この様な場面が日常に溢れている現状、人がこの先も歴史を重ねて行くのであれば機械は必要不可欠な物です。
その機械を作る仕事は機械があるかぎり無くなりはしないでしょう。そして機械の部材たる金属はこの先も使用されていく可能性が高い。即ち我々の仕事は無くならないです(人、機械どちらがやるかは別として)。

客観的に今の我々、多品種小ロット界隈の仕事としては?と考えると「結構イケるのでは?」と言うのが私の考えです。だってこれだけ必要不可欠な要素を担っているのに全然成り手が居ないんですよ?需要過多に対し極端な供給不足な訳です。我々の子供世代は大名商売が可能なんじゃない?って思う程です。
IT系からは離れた位置にあると言うのもこの際いい方向に働きそうだし、工芸の様に絶対必要って訳じゃない分野と違って、工業製品は絶対必要な訳ですから。
前述した耕運機の部品が壊れたとしたら?ハウジング割れたとか耕運用の爪のシャフトが曲がったとか、古くて部品がもう無い?んじゃ廃棄?いやいや作れますが?
これは一例ですが、この様な場面は往々にしてある事だし需要あると思うんだけど、どうですか?

勿論都度都度アップデートする事は必須です。アンテナを張り巡らせて敏感に反応する。(まぁこれって商売する上では当然の事ですが)
よく言われる技術を高め高精度、高難度の仕事を突き詰めるのも悪く無いですが、ちょっと違和感覚えるんですよねこれ。必須なのは向上心と探究心であって、それがあれば技術って勝手に上がっていく物だと思います。それに技術があるから潰れないで済むか?と言えばそうでも無いのは歴史が証明していますしね。ただ会社が潰れても探究心、向上心の結果人の手に宿った技術って必ず役に立つのでは?と思います。と言う訳で先行きの方は大丈夫。(と思いたいw)

後は後継者の問題ですね。
後継者不足と言う点では我々世代にも関係のある話しだと思います。我々の親世代は親の仕事(家業)を子供が継ぐと言うのはごく自然の事で、逆に継がないのは親不孝とまで言われた世代。
対して我々40~50世代は経済成長の波に乗って本当の意味で自由な風土が完成した世代でもあると思います。また我々の親世代も先代に反対する意識は強かったと思います。私の母親の実家も金属加工の家でしたが「あんたが継ぐ必要無い、私は違う仕事に就いて欲しい」と良く言ってました。そんな雰囲気で育った我々世代。親の仕事を継いだって人は50%居ないんじゃないかな?(この時点で今の後継者不在は見えてる訳で、殊更「後継者不足!」と騒ぐのは滑稽でもありますね。)
50%弱が継いで居る現状で我々の次の世代は更に成り手が居ない...
そんな中、工芸従事者向けの支援は活発です。こんなサイトもあります。「ものづくり継続プログラム」
工芸品の世界は「やってみたい!」と思う人が結構いるんだよなぁ良いなぁと思ってましたが、こんな記事が「半年給与なし。仕事保証なし」  京都・西陣織職人の「弟子募集」はブラックと言えるのか
やっぱりどこの世界も変わらない。やらなきゃ出来るようにはならない訳です。色々な施策を打ちつつも地道に続けるしか無いですね。
つらつら書いて結局この辺りに落ち着く訳ですw

悲観的に想定して楽観的に遂行していく程度が良いのかもしれません。
しつこく継続して行きましょう!


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