パーメンジュール加工

パーメンジュール、なにそれ?あまり聞かない単語ですよね。
軟磁性材料の一つですが、加工業界の中でもあまり聞かない材料です。
軟磁性材料とは保磁力の小さい材料という事になります。

軽く説明すると
残留磁化地点から磁化0まで磁場を負の方向へ加えていった時の磁場の大きさを保磁力と言います。
弱い磁場で磁化が変化する事を保磁力が小さいと言い、保磁力が小さい事を磁気的に軟らかいと言います。
軟らかい性質の材料を軟磁性材、反対に磁化を変化させる為に強い磁場が必要な材料を硬磁性材と言います。(多分あってるはず^^;)
用途は多岐に渡ります。磁性を用いた物は一杯ありますよね。

軟磁性材を使った部品は製品の重要な役割を担う基幹部品の場合が殆どです。
うちでも度々ご依頼いただいている純鉄やS10C製品もその一つです。
純鉄 旋盤加工
S10C 鉄心

この先も広く使われると思うので、覚えておくと良いかもしれません。

その軟磁性材料の中でも現状とびきり高性能のポジションに位置する材料の一種がパーメンジュールです。
私が知った切っ掛けは、もう数年前になります。
飛び込みで「パーメンジュールと言う材料を加工出来るか?」と会社に来られた方がいました。(純鉄やS10Cの加工してるので、ヒットしたのかもしれません)
その時はじめて聞いた材質だったし、完全にアポ無しの飛び込みだったので時間も多く取れず「何とも言えない」と言う答えになってしまい、その方とはそれっきりなのですが、聞いたことの無い材料だったので気になって取り寄せた事がありました。

まず入手に一苦労。通常の鋼材を扱っている問屋さんは「取り扱い無し」の答え。少し広げて問い合わせて二社から返答もらいましたが、問い合わせた内の一社が先にメーカーに問い合わせていた様で、もう一社からは「既に同形状の引き合いが来ているので見積もり不可」との答えをいただきました。要するに相見積もりの様な事は不可能という事です。
この時は端材程度の大きさの物を購入。

その後バタバタと忙しく数年眠らせていましたが、多少時間が出来たのでちょっと試してみました。
両端面をサラっと

とりあえず加工は出来そう。
そこで色々調べて、パーメンジュールの製品を扱っている会社さんに連絡してみた所、トントン拍子に話しが進み「試作してみる?」と言う事になりました。
このパーメンジュール、とても高価(キロ単価、初競りの大間のマグロ位...)なんですが、先方から試作材支給していただけるとの事。これは有り難い!当然無償で挑ませていただきます。

..................完成w
上手く行きました。(^o^)v
(夢中になると写真撮れませんね)

普通に削ると手痛い目に合う、興味深い特性がありました。
V(ヴァナジウム)を添加して加工性を上げている様ですが「加工性を増してこれ?」と言う感じです。
前述のお客様にも喜んでいただけました。以前依頼していた会社があったそうですが、都合で出来なくなっていたそうです。
この加工特性に大間のマグロ価格、ミスった時のダメージが大きい...確かに手出しするのは躊躇しちゃうでしょうね。

熱処理をして整えてあげないと本来の性能が出ないと言う特性が顕著の様なので、厳しい公差の場合は一工夫必要。
その熱処理自体も普通の鋼材熱処理とは一味違う熱処理になります。

個人的には今回経験出来たお陰で加工時の特性は多少掴めました。
複雑な形状は切削加工の所謂取り去る手法より、3Dプリンターの様な方法で積み上げて要所は切削等で締める。と言った方法が良いかもしれない。
切削は仕上げ寸法を考慮して大きめの材料(重量増による材料コスト増)からの加工になるし、万が一ミスった時に材料が高価な為、ダメージが大きすぎる。となると、やっぱり3Dプリンター導入するかなぁとも思うけど、積層する方法もコスト高いんですよね。粉体からになるし、時間もかかるし出来る人も限られてる(現状)。

少し調べただけでも全く知らなかった事が多く出てくる面白そうな材料、こう言うのって好奇心を刺激されますよね。楽しい。
工業製品は様々な分野で深いなぁと改めて思いました。

何から何まで特殊な材料パーメンジュール加工やってみた。でした。


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