労働生産性と呪い

労働生産性についての記事が今日の新聞に掲載されてました。
曰く「日本の労働生産性はOEDC加盟38国中23位の49.5ドル」全体の平均を下回る。
原因は労働時間の長さが生産性を落としていると言う内容でした。

その対策として書かれていた事は?
①短時間で業務をこなす意識改革。
②価値を想像して価格競争から脱却する。
③新事業でのグローバル化
なるほどね。まぁ良く言ってる事ですね。
金属加工業(試作小ロット分野)ではどんな感じか?順を追って見てみましょう。

①短時間で業務をこなす意識改革。
効率上げるって事でしょうか。これは大企業に限らず、中小零細も当然行っているはずです。何で上手くいかないか?ここが問題なんだと思います。
我々の業界でも現状の様々な効率化ツールは有効に活用出来る大変便利な物です。特にPCを利用した効率化(こんな事は20年以上前から解っている事ですが)。それをきちんと使いこなせる人はどれ位居るんでしょうね?
昭和中期の職人は「おらぁNCなんぞ出来ん!」と頭から否定する人が大多数でした。この年代はまぁ良いですが、平成中期の若い人達も使えない人の方が多いです。その理由は「スマホあるから」。

「残業多くてブラック」だとか「海外と比べて日本は生産性が低い」と言ってる人達や「給与安い」と言ってる人達の中でこれらのツールを使いこなして効率化に寄与出来る人ってどれくらい居るだろう?
残業時間が長くなるのは1時間に1万円の仕事をする必要があるのに3時間かかる(想定時間内に仕事を終わらせられない)からです。3時間かかれば当然報酬は薄まるので給与は安くなります。

エクセルと言うスーパーツールがあるのにPCスキルは打ち込みのみ(スキルじゃねぇ^^;;)って人が圧倒的に多いです。極めて非効率。
事務の募集をかけて、面接、試用期間まで20人以上の方を見てきましたが関数まで使ってエクセル出来た人は二人。老若男女関係無いです。うちの従業員を含めても(正社員は皆35以下、従業員は40以下)私以上に出来た人は一人だけでした。

私の子供達を見ても同じ様な状況となると、恐らく多くの会社(零細)はこんな状態かと思われます。この状態で効率化と言っても一部の出来る人達に負担が掛かるだけです。いくら効率的なシステムを構築しても、利用する側が利用しようという意識が無ければどうしようも無いです。
この状態を脱却する意識改革となると、義務教育の中にPCの科目を入れる事が必要なんだと思います。(これは始まってますね)

②価値を創造して価格競争から脱却する。
③とも被りますし、これまた良く言ってる(書いてる)事ですねε- (´ー`*)フッw
競合が多い所では価格競争になってしまうのは自明の理。となると、どこ(何)で価値を創造すれば良いか?
パっと思いつくのは、新商品の開発でしょうか。当然ですが最低限の設計知識がないと厳しいです。零細の町工場にその様なスキル持ちは現れない...となると社長自身が動く必要があります...(ますます月月火水木金金ですね^^;)
設計繋がりで言うとメーカーの大元(開発部、設計部)と繋がると言うのもあります。ここまで来れば他社より優位な立場に立てるし、メーカー側にも価値を提供出来るので優位に進められますね。
こちらも設計スキル、機械機構に対しての知見、信用問題や会社の体力の問題等をクリアする必要があって簡単では無いですが。

他の手段は競合が少ない市場を選定する。こちらも中々難しいです。
違う市場となると、使う機械や被削材が違うと言う事になり設備投資が必要です。ですが、機械を買えばokと言った市場ではあっという間に優位は崩れてしまいますし、機械を買うと言っても機械は高価ですし、価値を創造出来るような機械は更に高価。そして使いこなせる人が必要。(´ε`;)ウーン…

いずれにしても根本が正されないと厳しいです。根本の是正には何をどうすれば良いのか?
まずは個人の能力不足をきちんと認識して改める事は必須でしょう。これに理由や動機付けなんて無いです。ヤルのみ。

そして日本にかかってる呪いの除去。その呪いとは「安くて高品質」「安さ爆発(安すぎる事に慣れてしまった)」です。
かつて世界を席巻した日本の製造業。大きな理由は「安くて高品質」。これは日本自身が世界的に確立した日本ブランドの根幹と言っても良いかと思います。
そして今の日本の労働生産性が低い元凶は、長い期間「安くて高品質」の旗(ブランド)を掲げてきたからだと私は思います。

製造業、工場が多く、日本の構造とよく似ているとされるドイツは冒頭のランキングでは12位。そのドイツの高級ブランド車は日本車より不具合多いのに高値です。高値+作り込みが甘くてもOK(ブランドの維持は別腹ですね)となると、3時間で3万円以上のリターンがある。労働時間が短くても生活は維持できる。そりゃ労働生産性も高くなるよね。(ブレずにブランドを構築する事はホント大事ですね)

対して日本車は高耐久でしかも安い。世界各国のテロリスト御用達な位です

(「テロリスト 御用達 トヨタ」等で検索かけてみて下さい)
「安くて高品質」でも作るのは同じ人間です。片や3時間で3万以上のリターンに対して、3時間で1万のリターンしか無い。
労働生産性が落ちるのは必然とも言えます。
(トヨタに限らず各メーカーも高級ブランド路線を売り出して一定の成果は上げていると思いますが、既存の勢力からの難癖もあって、まだまだ難しい印象を受けます。ここはブレずに続けて欲しいです。)

頼みの綱?の国内消費はどうでしょう?もう長い期間、安さ爆発!ですよね。
日本の製造業では太刀打ち出来ない安さ爆発!は消費者側からすれば歓迎出来る事ですが、消費する為の給与は、その安さ爆発に押されて上がらず仕舞...
ある意味労働生産性を低くしているのは日本人自身とも言えますね。

ブランドの構築は各方面ではじまっています。ここは我々製造業でも一翼を担えるポイント。すぐに効果は出ないと思うので、じっくり取り組んで行きたい所です。
そして安い物天国の裏側をもう少し突っ込んで考える事も必要かと思います。
良い物にはきちんとした対価を支払う。少しでもこのマインドの裾野を広げていければ良いのでは?と思います。


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