もう3月も終盤。
ここ数か月は本当に激動の期間でした。
理由は前年の4月に入社した社員が退職してしまったから。
教育とか言うお題で書いた割に実に無様な結果で恥ずかしいです。
やはりうち位の会社(仕事内容、規模等)では人を育てて行くのは難しいのでしょうか?
理由は大きく二つ。
まずは「他にやりたい事が出来た」
う~んこれは何とも仕方ない所と思いますが...副業を許していました。
そっちが思いの外、上手く行っていて興味がそっちに向いたとの事でした。
そして「付いて行けずキツくなった。」
上とも連動してますが、一番の理由はこっちなのかな?
うちの仕事は所謂「3K」、危険、汚い、臭いと言う奴です。
まぁその通りなので何とも言えませんね。その中でも「危険」の部分についてはしっかり認識する必要があります。指や腕で済めば良いですが適当にやっていれば本当に死にますし、死なせてしまいます。
指や腕と簡単に言いましたが、一度機能が失われると喪失感は結構大きいです。(私も指やってます)
危険と言うのは、例えば車のドライバー等もそうかもしれませんが、車の運転の様に一般的に認知されていないので、ここは一番目に教える事になりますし、強めに教える事にもなります。
昔だと手袋しながらフライスやってたら問答無用で殴られたと言う具合ですね。
勿論手は出してないです。ですが、本当にシャレにならないのでかなりしつこく繰り返します。
そして量産系の会社と違って覚える事が多い。本当に多いです。
量産では無いので毎日同じ事をする訳では無く、今日はドリル砥ぎ、明日はバイト砥ぎみたいに次々変わるし、計測やら何やら...頭で覚えられる限界をすぐに超えてしまいます。
とは言え初めから膨大な事を詰め込む事はしません。だって出来る訳無いですから。
そもそも外径、内径の区別が付いて来て、感覚的に認識出来る様になるのは一年以上経過してからです。
外径は削り過ぎればマイナス、内径は削り過ぎればプラス。シリンダーゲージの針の見方、どちらがプラスでどちらがマイナスなのか?たったこれだけの事でも肌で解る様になるには一年以上必要なんです。
だからこそノートに書いて見返す習慣は付けなければいけない。これはマストだし、口酸っぱく言う部分でもあります。
その上でうちでは初心者(新卒)には汎用旋盤を重点的に行ってもらう様にしています。
何と言っても自分で動かして切削するので肌で感じるにはコレが一番良いと思います。
NCを扱う様になったらバイトの傷み具合は音や切粉の状態で判断しなければいけない、要するに自分の感覚を切削仕事の仕様にする必要があります。それを体得するのに汎用機は適していると思います。
初歩的なノギスが扱える様になればコンマ台の計測が可能になります。
後は基本的な材種ごとの周速やバイトの種類、切り込み量や送りと言った物(知識)を使えば加工は可能です。これはノートに纏めれば2~3行の事です。
まぁそれでも覚える事は多いかな?
ノギスが扱える...と書きましたが、簡単に思えるこの作業でも据わり具合だったり狭い箇所だったり状況状況で違うので、「本当にこれ合ってるの?」と言うのを繰り返し繰り返しで体に覚えさせる必要があります。
加えてドリルの砥ぎ方の基本だったり、バイトの形状、丈決めの方法だったり順番、振れ止めの使い方、三角関数等々...これが日々変わるので頭で記憶するのは難しい。
前述した様に覚えきれない事はノートに書いて外に記憶させておく必要があります。
同じ様な仕事が来た時にそれを見返して、今の仕事に生かす。
どこに何を書いていたか?効率良くそこに辿り着くための工夫。
ノートを見直した時に解り易く書き留める、それを見返す、付け足す事があれば書き加える...そう正しく勉強ですよね。(ノートの書き方、工夫や効率化は、そのまま仕事に生きてくるんです。)
学校卒業して勉強から解放されたと思ったら、今度はそれ以上に勉強しなきゃいけない訳です。
安全に対しての知見を増やし、ノートに書き込み、見返しを繰り返しながら汎用機仕事をこなして行き徐々に頭と体に馴染ませていく。
そして我々切削仕事の大きなポイントである「削り過ぎたら終わり」と言う怖さをある程度理解出来た辺りでNC機に移行する。NC旋盤は汎用機の動き、切削の手順をそのまま行えば良いだけですから、前述の基礎が出来ていれば後はG00とG01の組み合わせに材種ごとの周速や切り込み量、送りの要素を加えれば意外と簡単に出来ちゃいます。
NCだとコマンドがズラズラ並んでいるので物凄く難しく思いますが、全然簡単なんです。
まぁマクロだの何だのと言うのが出て来ると多少難しくなるかもしれませんが、基本はG00とG01の組み合わせだけです。
と言っても全コードを覚えるのは難しい。そう、またノートの出番です(私も20年近く前に書いたノートをいまだに見てます^^;)。
多少動ける様になったとしても適当に削って大体寸法が合ってればOKと言うような仕事じゃ無い。
寸法は勿論、バリの無さ、見た目が伴ってはじめて製品になる。またそれを適正な時間内で完了させなければ仕事として成立しない。製品として品物を赤字にならない様、効率的に進める為の切削条件や加工方法の探求。体得出来ないまでも、上記の事を念頭に置いて出来る限りそれを達成できる様に動く。要するに仕事に対する姿勢を身に付けると言う事。これが初心者(新卒)に求める仕事です。
当然1年で出来る訳無いので3年位で見てます。
今回の場合、副業を許していました。結局自分次第の事ですから。
ですがやはりここは禁止するべきでした。(会社外でやられていれば解りませんが)
副業しながら出来る程甘くないと言うのは私自身が良く理解していたハズで、ここは反省すべき所ですね。
また厳しく教えると言う点については、社員やパートとも良く話しました。
5年目の社員からは「出来ない人に合わせて緩くしたら、意味無いんじゃないですか?」と言われました。
確かにそれをすれば辞めずに続くかもしれませんが、会社自体の質が落ちてしまって彼の言う通り本末転倒になってしまいそうです。この辺のバランスを上手く取るのが難しい所ですが、うちの売りである「技術力」を犠牲にしてしまっては意味無いですよね。
パートからはちょっと厳しいけど仕事だし仕方ないのでは?との意見でした。
(まぁ仕事ですから彼等の意見は当然と言えば当然ですね。)
技術を教えるのは難しいし、技術を教わるのも難しい。
技術を体得し、その先にある目標を達成する為に体得した技術を生かす。と言う想いを共有する事こそが肝要ですよね。となると教わる側にもある程度強い目標が必要なのかもしれません。
ですが、若い内から覚悟決めて出来る人って少ないですよね?
私自身若い頃は本当に如何ともし難い人間だったし...
だからこそ時間を有用に使って早い段階で正道に付いて欲しいと言う想いが強いです。
想いが強過ぎなのがダメなんですかね?ホント難しい。
今回の彼は特に手先が器用だったので余計期待かけていたのは事実です。
考えてみれば目血走らせてナンパしても上手く行く訳無いんですよね...
では、あまり期待をかけずに見守るって事で良い?イヤイヤイヤそれはまた違う気がする。
(´ε`;)ウーン…
私自身も辞めたいと思った事は一度だけでは無いです。それでも続けてきたからこそ「今」がある訳ですが、その私の「今」があまり魅力的に映らなかったかな?
5年目の社員とは年も近いので色々話していたみたいですしパートとも良く話していた様ですが二人とも「何も考えて無いと思いますよ」と言ってました。
身も蓋も無いな(;´Д`)
ですが全ては私に起因する事。上手く導けなくて申し訳無かったと言う想いが強いです。
彼の次のステージで今までの事が少しでも役に立つと良いのですが...
ショックな中でも一度離れていたパートさんが戻って来てくれたり、良い事もありました。
どんな人でも辞められると少なからずショックなんですが、だからこそ逆に戻って来てくれると言うのは本当に嬉しいです。
こういう事もあるので辞め方、送り出し方は大事ですよね。お互いきちんと筋を通す。
「どうせ辞める奴だから」とか「どうせ辞めるんだから」等、相手に顔向けできない様な辞め方、辞められ方は極力避けるべきだと思うんです。人間力、大事ですね。
私一人で背負ってきた物が社員の成長とパートさんの定着のお蔭でかなり軽減されてきました。
ここらでまた社員として定着してくれる人が出て来ると良いんですが...やっぱり「人」なんですよね。
私も従業員にしても「この子は続くな」と思っていたのでショックが大きくてしばらく「ゲンナリ」してましたが、それでも前を向いて進むしか無いんですよね。