金属加工エンジニアのキャリア

12月も中盤過ぎて今週で仕事納めの会社も多いと思います。
うちも12/27~1/4までお休みです。
中々景気が上向かず、パっとしないです。
それでもお声がけいただき、何とかやってます。本当にありがとうございます!

現状では単品、小ロットの割合が多いです。この辺は枯れませんね。
私とキャリア10年以上の従業員が忙しい。
彼も良く続けたなぁと思います。普通科の高校卒で入って12年。
ここ最近、伸びてきたなぁと感じる事が多いです。

金属加工界隈、色々な業態があるので一括りには言えませんが
「底辺職」「工場の仕事は給料が低い」「3K」まぁ若者が来ないのは当然。
この印象めちゃ強い。

しかし、実際に数字と構造を分解してみると、この認識は結構ズレていそうです。
結論から言えば、金属加工エンジニアは「稼げない職業」ではありません。
問題は「実態」ではなく、どう見られ、どう説明されてきたか?

旋盤工と他職種の年収比較
まずは一般論として、年収の話から整理してみましょう。
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によれば、
金属工作機械工(旋盤工等)の平均年収はおおむね420〜470万円程度となっています。

同じく「賃金構造基本統計調査」から
* 美容師:370〜380万円
* 介護士・保育士:350〜380万円
* 飲食店正社員:330〜360万円

私自身、意外に思いましたが、
旋盤工は決して低年収層ではなく、日本の中では「中の上」に位置します。
それでも「稼げない」というイメージが残るのはなぜでしょう?

成り手が多い職業ほど、年収は低くなりやすい
まぁ当たり前と言えば当たり前なんですが、ここが重要なポイントです。
美容師やアパレル、飲食業は年収が低めでも、金属加工士より成り手は多い。
実際美容室はコンビニより多いと言われてます。
成り手が多い仕事ほど競争も激しいし、年収が上がりにくいのは、ごく自然な話ですよね。

一方、金属加工エンジニアは成り手が少ない。非常に少ない!
これは能力の差ではなく、
* 仕事の見えやすさ
* イメージの良さ
* キャリアの分かりやすさ
この3点の差だと思います。

金属加工エンジニアは工場の中にいて、成果は製品の内部に隠れ、仕事の価値が外から見えません。
知らない職業は、選ばれない。これまた道理ですね。

もう一つの問題は呼び名です。
「旋盤工」「機械オペレーター」という言葉は、どうしても「指示待ち」「肉体労働」という印象を与えます。

しかし実際の仕事はどうでしょうか。
* 図面を読み
* 工程を考え
* 工具と条件を選び
* 精度とコストのバランスを取る

こう挙げると、頭脳労働ですよね。
単なる作業ではなく、設計と生産をつなぐエンジニアリングそのものです。

だから私は、この仕事を
**金属加工エンジニア**
**Precision Manufacturing Engineer**

と呼ぶべきだと考えています。(もうちょい良い呼び方ありますかね?)

ここでよく聞かれるのが、
> 経営をやらなくても高収入は可能なのか?
という疑問です。
結論はYES。

経営報酬(4〜500万円相当)を除いても、
* 設計成立性の判断
* 工程設計
* 高精度・難材加工
この3点を高いレベルで担える人材なら、40代で年収1,000万円弱は現実的です。
加えて「見積り作業」と「人の差配」が出来る様になれば1,000万超えてくる。

これは理想論ではなく、
「その人が会社にもたらす利益」から逆算した合理的な数字です。
ソースは私や仲間。取引先の従業員の方々。

では、どうすればそこに到達できるのか。
キャリアを簡単に整理すると、こうなります。
* 20代前半:再現できる作業者
* 20代後半:任せられる加工者
* 30代前半:工程を組める技術者(今のうちの10年選手のポジションですね。)
* 30代後半:利益を生むエンジニア
* 40代:会社が手放せない存在

ポイントは一貫して、
**手を動かす → 自立して判断出来る → 利益を理解し作る**
この進化です。
単に加工するだけでは、年収は頭打ちになります。
「この工程は無駄だ」「この条件は危ない」「これは儲からない」
そうした判断ができるかどうかが分岐点です。

なぜ1,000万円級が少ないのか?
* 価値が言語化されてこなかった
* 技術と利益が結びつけて説明されていなかった
* 本人も会社も、その水準を想定していなかった
* 途中で辞めてしまう

能力が足りないのではなく、きちんと評価設定する会社が少なかったのでは?と思います。
(もちろん本人の取り組み方も重要です。)

金属加工エンジニアは、低賃金職でも斜陽産業でも将来性のない仕事でもありません
周知されず、説明されてこなかっただけの、高付加価値エンジニア職です。

そして本質は、根性論でも長時間労働でもなく、
自分の加工力を、利益に翻訳できるか?
ここに尽きます。

もし若い世代にこの仕事を伝えるなら、
「旋盤を回す仕事」ではなく、
**技術力(加工力)と工程(効率)で、会社の利益を作る仕事**

そう説明すべきだと思います。
それができたとき、
金属加工という仕事は、「選ばれる職業」になるはずです。


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